リタイヤ時のIDECO出口戦略シミュレーション

この文章は2023年3月時点の情報に従い記述しています。
下記は私の理解であり、それに基づいてシミュレーション機能を構築しています。
個別具体的な取扱いについては、お近くの税理士や所轄の税務署等にご相談ください。

はじめに

IDECOの使用は入金時、入金額の税額控除が得られることの代償として、引き落とし時は入金額を含めた総額に対して税金が課されることとなります。ただし、退職金と同様の扱いとなるため、課される税額は総額から退職所得控除額を除いた金額に1/2をかけた上で税率をかけたものとなります。
セミリタイヤ後のIDECOの継続は、それに見合う収入がない限りはIDECOの加入年数を伸ばしたい、という目的以外にはメリットのあることではありません。(運用指示者のみではIDECO加入年数に含まれません)

IDECOの受け取りタイミングとしては
1)退職金とIDECOを同年に受領する
2)退職金受領後翌年以降19年以内に受領する
3)IDECO受領後翌年以降4年以内に退職金を受領する
4)退職金受領後20年目以降にIDECOを受領する、もしくはIDECO受領後5年め以降に退職金を受領する

以上のパターンが考えられますが、ここでは2)のみを対象とします。
4)は同額の退職所得控除が2回使えるラッキーなケースです。ただ通常使える人はあまりいないでしょう。
1)、3)についてはそれほど複雑ではないので、希望者がいる場合のみ追記する予定です。

IDECOの受け取り方法

IDECOの受け取り方法については下記の2つとその組み合わせであるパターンが考えられます
1)一時金での受け取り
この場合は退職所得と同等の扱いとなります。
2)年金での受け取り
この場合は雑収入とはなりますが、公的年金控除として65歳以前は年額60万円まで、それ以降は110万円までが無税となります。
なお年金額については、あらかじめ金額が固定となるわけではなく受領期間を20とした場合はIDECOの運用を続けた上で,1年目は1/20、2年目は残額の1/19、3年目は残額の1/18の金額が払い出され、20年目に残りの全額が支給されることになります。
3)1)と2)の併用パターン
退職所得控除額が十分残っている場合は1)だけで問題ありませんが、それを超える金額がIDECOにある場合2)の年金支払額で一時金の金額を調整し、税額の低減を図ります。

退職所得控除の適用手順

退職金受領後翌年以降19年以内に受領する場合を想定して、手順を記述します。
1)勤続年数から、退職所得控除額を決定します。
2)退職金を受け取り、それが退職所得控除額にみたない場合、退職金が何年分の勤続年数に相当するかを計算し、みなし勤続年数とします。
3)IDECO受け取りの時点で、前回の勤続年数からみなし勤続年数を引いたものと、退職後IDECOを継続した年数を足して、新たな勤続年数として退職所得控除額を再計算します。
4)年金分を除いたIDECO一時金を退職金として税金を計算します。

シミュレーション

白抜きの部分を埋めてください。
合わせてグレーのところに計算結果が表示されます。
なお税率、控除額については手動での書き換えも可能です。



ある人の例

ある人は31年と10ヶ月で会社を辞め、800万ほどの退職金がありました。
会社でおこなっていた企業型DCは、退職の時点でIDECOに移管し個人で続けることとしました。
その後、3年ほど別の会社で仕事をしましたが、その会社では企業型DCや退職金制度はありませんでした。
退職後、ある人はお馬鹿さんだったのでIDECOを継続し、60歳となり終了しようとしてます。IDECOで積み立てた金額は楽天インデックスファンド全米株式のおかげでほぼ倍増し1,200万ほどになりました。
なおある人には60歳から以前の会社で入っていた基金から毎年28万の年金が支給されることになっていますので、その他の公的年金は30万くらいにしようと思っています。

勤続 32
退職金 8,483,700
退職所得控除 16,400,000
みなし勤続年数 20
IDECO継続 5
IDECO退職所得控除 6,800,000
想定IDECO終了時 12,000,000
課税金額 2,600,000
税率 20
控除額 97500
標準税額 422,500
年金額 300,000
受領年数 15
想定老齢年金 4,500,000
想定一時金 7,500,000
組み合わせ時課税税額 350,000
税率 15
控除額 0
標準税額 52,500

一時金で全部払い出すと、税金は422,500円。
年金と併用払いにすれば52,500円で済むことになります。

資料集

退職金所得控除の求め方

勤続年数 退職金所得控除
20年以上 (勤続年数 – 20x 70万円 + 800万円
20年未満 勤続年数 x 40 万円

みなし勤続年数の求め方

収入金額 みなし勤続年数
800万円超え (退職金 – 800)万円 ÷ 70万円 + 20
800万円以下 退職金 ÷ 40万円

所得税税率

A 課税退職所得金額

B 税率

(住民税含む)

C 控除額

1,000円から1,949,000円まで 15% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 20% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 30% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 33% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 43% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 50% 2,796,000円
40,000,000円以上 55% 4,796,000円

10 COMMENTS

MABO

こんにちは。
まだ3年あり、深く考えていなかったので参考になりました。
ありがとうございます!
自分は社員群変更で、同じ会社から二度退職金をもらったレアケース?ですが、二度目が少なかったので、おそらく一時金パターンと思ってます。

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nekomaru0205

IDECOがうまくいくと税負担が重くなるという皮肉。
実は今週後半からSP400が落ちているので、このまま停止しちゃえば税金払わなくても済んでしまうというのはちょっと悲しくもある。

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こてっつん

ideco、出口戦略が難しいと聞いていましたが
一時金での受け取りと年金との併用では
税金の差が大きいですね💦
税負担を軽くするには受取時にはちゃんと確認しないとですね

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nekomaru0205

実例(あるひとの)見るとなんとなく感じれるでしょう。
これEXCELでは以前に作っていたんだけど、汎用的にシミュレータとしてWEB上で動作するようにして公開してみました。
3時間くらいかかったので誰か褒めて欲しいなぁ😁

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すごいですーーーーー!! こういうことなんですね!
こういうのが簡単にできちゃうんですね!
改めて尊敬です(@_@)
万一の時にも(!?)、こんな手に職があれば、絶対困らないですね。
羨ましい~(*^^*)
プログラムに驚き&感動で、実は中身の理解が追いつかない(^^;)
わたしは企業型というの?(確定拠出年金)なのですが、考え方は同じですか?
プログラミング以前に、わたしには経済の勉強が必要かも…(^^;)

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nekomaru0205

えへへ。ありがとう。こういう反応嬉しいです。
idecoは企業型DCと同じようなものです。
以前は企業型DCがある会社の人はidecoは出来なかったのですが最近は両方できるように法改正されました。ですが、まあ長く続けることが前提なのに60まで(これも改正されて働いてたら65だか70まで)しか続けられないので、今無理矢理やらなければならないものではないとおもいます。

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あ、すみません!
ある人の例をちゃんと読んだら、企業型DCと書いてあった(>_<)
やっぱり理解力が…。
にゃんたさん、わたしの退職時にはぜひご相談にのって下さいませ(*^^)/

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MABO

こんにちは。
こんな身近に神ツールがあったのに、すっかり頭から抜けてましたー😓
後でやってみよう、とそのまま忘れてしまった自分を殴ってやりたい🤡
ちょっと自分でも勉強したので、このツールの深さがわかります。
自分の数字を入力してみると、iDeCoが大きく増えない限り、一時金で行けそう。
念のため、2年拠出して控除枠を増やしておきます。
このツールとブログ、とても参考になるので、今度ブログで紹介させて頂く事を考えております。問題があれば教えてください。
ありがとうございました!

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nekomaru0205

恐れ入ります。
ぼくのブログの検索からの到達ランキング1位のページです。
ってか、他はそれほど検索から流入しない。ためにならないからな😅
自分用に作ったものを使ってもらえるのは嬉しいです。
紹介していただくのは全く問題がありません。
ないように不具合や問題があれば教えてくださるとありがたいです。

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