野辺山ウルトラマラソン

野辺山ウルトラマラソン。

前日、隊長から連絡網。
「朝晩は冷え込むので、スタート時の服装には注意しましょう」
今年で3回目のぼくに、今さら何を。
3歩歩けば、物を忘れる鶏じゃあるまいし。

朝4時半、スタート会場前、気温は3.6度。
そこには、萩往還の半そでのTシャツ1枚で震えるぼくの姿があった。
鶏なみの記憶力。
ただ下半身は、例のコンパニオン仕事の名残の膝通のため、タイツを履いています。
(注:タイツの上には短めのパンツもはいています)

寒いから走らせてー、なのでスタート。
脚の付け根と膝にはやっぱり違和感。
まだ痛いというほどではないんだけど、ちょっとなんかしたら痛くなるだろうなぁという感触がする。
完走出来なかったときの言い訳リストの先頭に「脚に違和感」と書いておく。

タンタンタンと走ると、10km地点。この辺りから林道トレイルになる。
去年はここで転んだっけ。
だけど今年は大丈夫。萩の山道を夜半に走った歴戦の勇者。それがぼく。
あれー、林道ってこんなに走りやすかったっけ(^^)
はい。この先の展開はわかりますね。
どんどん登って、コース最高地点1,908mの標識。
「やりましたね」
隣に居合わせたお兄さんと喜びを分かち合う。ここからは下り。
先に下ったお兄さん、「あー」という声に驚いて振り向く。
叫んだのはぼく。
転びました^^;

野辺山で転ぶのは3回目。毎回転んでいます。
履いていたCW-Xのおかげか、擦りキズはなかったものの、痛かったのでうずくまって、しばし休む。
なんか膝のとこぷっくりしてる。
ここで止めてやろうかと思ったけど、まだ帰りのバスは来てないだろうから、しょうがなく走る…
てなことも去年書いたような気がする進歩のないわたくし^^;
かわりに、言い訳リストの2行目に、「転んで、足が痛い」と書き加える。

取り敢えず林道トレイルを下り、林道の後も坂道を下る。
応援に立っていたおばさん。
「みんな、よく頑張ってるわねー。下りはここまでであとは上りよ」
?…ぼくの聞き間違いか?
少し下ったところで、道は上りへ。
本当だ。でも、おばさん。その応援、ちょっと不満(-_-)

坂を上って30km辺り、もうお約束のような眠気。
最近すっかり諦めの良くなったぼくは、路肩に腰掛け、うつらうつら。
したら「ガンバでーす」って大声で叫んで通り過ぎる人影というか魚影というか…セーラー服着た鯛焼きが走り過ぎる。
ウルトラ業界では有名なコスプレランナー。
こいつ、萩往還の250kmのほうも、走りやがってます。

気温はどんどん上がります。
当日の最高気温は26度。朝との気温差は23度。この辺の野菜が美味しいわけです。
それにしても暑い。体感の温度は32度くらい。根拠はない(^^;
エイドのたびにガンガンコーラをあおります。
とった水分は、膀胱に回る前に汗に変わります。
下世話な話ですが道中のトイレ、前半はどこもメチャ混みでしたが後半になるとガラガラでした。

60キロの大エイド。
仲間のミナトンとあったのでハイタッチ。こいつとは、毎回このエイドであいます。
1人目を引く女性がいます。黒いミディのドレスで多分なかなかの美形(そんなにジロジロ見てません)
大エイドのなかで優雅に立ち振る舞われてました。

大エイドをでて走る。
65kmくらいまでのなだらかな下り坂を終えると道は上り始め、歩く人が増えてくるがぼくはまだ歩かない。
次の大エイドのすぐ先から始まる馬越峠からは歩いていいことにするため、この区間は走り続ける。
身体に負担の無いよう、キロ6分半と定めて正確に坂を上る。
とはいえ、体感時計なんて持ってないので頻繁にガーミンちゃんにお伺いをたてながら走る。

いつの頃からか、同じ足音がついてくることに気がつく。
カーブで並んだ時にチラッと見ると、先ほどの黒いドレスの美形。
へー、と思いましたが、ぼくは6分半を守るのが忙しい^^;
このまま、次の大エイドまで数キロを縦1列で走り続ける。
ちょうど他に女性が2名ほどいたタイミングで、居合わせた応援のヤンキー系の兄ちゃんから声がかかる。
「がんばってー、かわいこちゃん!(^^)」
黒いドレスの美形だけが、凛とした声で「ありがとうございます」と答える。
あー、自覚はあるんだ(^^)

大エイド到着。
続いて黒いドレスの美形も到着。
黙ってるのもなんなので、「坂、強いね」って話したら、やっぱり凛とした声で「さっきのエイドで寝てましたから」って返ってきた。
こいつ同類か?^^;
シンパシーを感じた瞬間。

エイドではお蕎麦をいただいて、少しダラダラ。

再スタート。
黒いドレスの美形はもう見当たらない。
先に出たのか、また寝てるのか。
とにかく走る。
74kmの標識。「ここから馬越峠:頂上まで5km」
ガーミンでこの地点のキロ数を確認しておく。
走る。迫りくる坂。やはりここからの坂は違う。
歩きを交えて、ぼちぼちと走る。

給水エイド。
標識から3km。後残りは2kmだ。
走ってきた人とボランティアの人が話している。
「あと、3kmですね」「はい、がんばってください」
えーーー!あと2kmじゃないのー?
心が折れる。
スタートしたが気持ちが続かない。
歩き出し、そして嫌になって道端の草むらに足を投げ出して座る。
ぼーっと、通り過ぎる人を見てる。
でも、みんな優しい。
「大丈夫ですか?」心配そうな人。
「がんばりましょうよ」笑いかける人。
しょうがない。また走って、歩いて。
ただ、再びの睡魔。もう簡単に休む決心。
道端の草むらに、今度は寝っころがり、眼を閉じる。
気がついたら、なんか夢みてた気がする。
どれくらい休んだかわからないけど、気持ちは妙にすっきり。
走り出す。角を曲がるともうすぐエイドですよ、の声。
あれ、峠の頂上までにまだエイドあったっけ?
先ほどのエイドから約2km。
まだ先があるのか不安な気持ちで、エイド到着。
「馬越峠の最高点です」79km地点。
やったー。気持ち復活。やっぱ距離あってたじゃん。
ここからは激下り。およそ8kmを一気に下ります。
かっとび猫モード、スイッチオン。
転んだときのことも痛い足のことも考えない。
ひたすら前だけを見つめ、人がいたらロックオン。
どんどん抜かします。
エイドもすっとばかし、もう山本リンダ状態。
(はい、ここでまた少し古い話に入ります。
山本リンダは1970年代全盛の歌手でヒット曲に「どうにもとまらない」「狙い撃ち」があります。
「困っちゃうな」はこの際おいておきます(^^;)
走って道は川縁へ。
坂はおしまいで、かっとび猫モードも終了です。

87kmでエイド。
美味しいおうどんをいただきながら、聞こえるのはボランティアのおねーさんとおばさんの会話。
おねーさん「さっきの人、来年はエイドに塩置いてくれっていってきたんですけど」
おばさん「あー、係りの人に言っといて」
ぼく「あ、キャビアとフォアグラも置いてほしいんですけど」
おばさん「あー、これは言わなくていーから(^^)」
さすが、おばさん。わかってらっしゃる。亀の甲より年の功。
ふん(^^;

走る。
ここから3kmはほぼフラット。
6分ちょいでがんがん走る。
「おにーさん、おにーさん」
突然声がかかる。
あ、黒いドレスの美形。
「おにーさん、萩往還走ったの?」
「うん」
「へー、すごいのねー」
走り去る黒いドレスの美形。
これが、僕が彼女を見かけた最後になった(^^;

90km地点。なだらかな上り
見える範囲の人はみんな歩いている。
この大会、初めて出た人は10km地点から歩いている人の多さにおったまげる。
それほどののぼりではないのに、なぜか足が動かない。
下り坂のダメージか。
ぼくも毎年歩くが、今回は違う。
「最後の10kmはどんなことがあっても歩かない」
事情により、決めたぼくのお約束。
照り付ける日差しが眩しい。
シャツには大きく真白に塩が浮いている。
余計なことを考えると、きっと足は止まる。息の数と歩数だけを合わせて無心に走る。
暑い。意識が朦朧とする。まえを歩いていいる人との距離がなかなか縮まらない。
ぼくは走れているのか?大丈夫。まだ走っている。
止まりそうな足を、腕を大きくふるようにして引っ張る。
込み上げる吐き気。
道をそれて、うずくまる。
熱射病かな。歩かないけど、立ち止まるのは許してね。
ふらふらと夢遊病のように走る。
吐き気がおさまらない。
何度もうずくまる。それでも歩かない。
走る。
あと3kmの標識。
前回も前々回もここからは全力走。
今回も…そう思うけど身体がついてこない。
沿道のおばさんが声援をくれる。
「ラストスパート。頑張って!」
声を返せない。代わりにひきつった笑顔を返す。
「その笑顔が出せれば、大丈夫」
大丈夫じゃない。僕が笑うのはただ気が弱いから。
這うように走る。

やがて聞こえるゴールからの歓声。
角を曲がるとレッドカーペット。
「にゃんたさん」隊長だ。
歩道から大きく手を伸ばしてくれる。
少し戻ってハイタッチ。
ありがとう。
そしてゴール。

疲れた(^^;
あとでランナーズアップデート確認したら、最後の10kmに1時間30分以上かかってる。
キロ9分か。なんだそりゃ。次回は頑張りますm(__)m

体育館で着替えを済ませて、外に出ると、参加者向けのお蕎麦のサービス。
ありがたくいただくことにする。
「おばさん、お蕎麦ください」
「はいよ。大盛りにする?それとも普通盛り?」
「普通盛りでいいです」
笑いながら答える。
「はい。おにーさん、笑顔がいいから大盛りで」

気が弱いとお蕎麦の普通盛りもたべれないのかっ(^^;

記録:12:36:38

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