記録:44時間58分
萩往還A・マラニックの部250km。
すでにB・マラニックの部140kmを完走した人だけが参加できるコース。
それでも参加募集人数先着順500名のところ、初日振込で600名を超えた。
(そこまでは出走が許されたらしい。)
午後6時前、スタート場所の瑠璃光寺には続々と人が集まる。
制限時間48時間の旅の始まり。
スタートは並んだ者からのウェーブスタート。
僕のスタートは4番目だったかな。
5分おきのエイエイオー唱和の後走り始める。
まずは山口駅の前を通って、140kmのコースと同様槙野川を目指し、そのあとはそのまま河川沿いを直進する。
見覚えのある道を懐かしく思いながら走る。
太陽が最後の輝きを失った後は、辺りは急速に闇に包まれていく。
ランナー毎に前後につけることが義務付けられている点滅機の青が美しい。
まるで蛍のよう。
蛍の群れが進んでいく。
合わせて、あらかじめ装填しておいたヘッドライトのスイッチを入れる。
今回は少し明るめのGENTOSのものを用意している。
...点かない。
あれ?立ち止まって確認してみるが点かないものは点かない。
「こんなこともあろうかと思って」宇宙戦艦ヤマトの真田さんのように呟いて背中のリュックから予備のヘッドライトを取り出す。
こんなもんまで持ってるから、僕のリュックは重いんだよな。
予備のライトはちょっと暗いのが難。
ごそごそしている間に、かなりみんなとは離されてしまった。
この時間、まだまだみんなのペースは速い。
周りに見えるのは数匹のはぐれホタルのみ。
怖いので装着後は、本体のホタルを目指し少しスピードを上げる。
前の人についてかないと道わかりづらいんだよね。
追いつくまでにかなり時間がかかった。
歩道の状態はあまり良くない。路面が結構荒れてて凸凹多数。
怖いなあと思いながら、スピードを上げる。
峠に差し掛かっても、足が止められない。この時間帯、「間に合わない」という強迫観念に取り憑かれていたかも。
まだ先はとんでもなくあるのにね。
最初のチェックポイント豊田湖畔についたのは2時少し前。
暖かいおうどんをいただき、再び走り始める。
少し落ち着くが下り坂を飛ばすのはやめられない。
下り坂で稼いで、なるべく貯金しておきたい。
スピードを上げたまま、トンネルに入った途端に縁石に足を取られた。
無防備の身体がそのまま宙を飛ぶ。
「やっちゃった。このままリタイアか...」
そう思いながら、着地は右手から。続いて右肘、右膝、左膝。
セルフチェック。
右手首ちょっとくじいたかな。右肘、左膝の損傷はほぼなし。
右膝、擦りむいた程度。タイツにうっすらと血が滲む。
「あ?買ったばかりのC3FITがー」
タイツと手首さえ除けば損傷は少なく、両方とも走るにには関係ないので、リタイアするのはやめておく。
走る。5時を越えて辺りは少し明るくなり始める。
眠気はそれほど感じない。
向津具半島、海湧食堂で用意された朝食。
年代わりで、牛丼だの中華丼だのが出ているらしい。
牛丼だったら、「つゆだけ」にしてもらおうと考えながらお店に入ったらおかゆだった。
一緒にかつおだしのあんかけ。ちょっとおしゃれね(^^)
次は油谷島を一周。島に渡ると、ちょうど島を出ていく先行ランナーとすれ違う。
みんなそれぞれ励ましの言葉をくれるが、実は彼らが島に入ったのは1時間以上も前。
辟易感が笑顔の下に隠れてる。
島の反対側に向かう道はどんどん上り始める。
「ちょっと、これを走れと言うんですか?」と関係者の人に聞きたくなるような坂。
歩けと言われるだけでも、十分に文句を言う資格がもらえそうな坂。
さすがにムカつく半島(向津具半島ーちなみにここで、ムカつくマラソンってのも開催されるらしい)
あー、海が綺麗。段々ばたけがうつくしーわー。
あれ、棚田だっけ?棚田と段々畑って違うんだっけ?
油谷島を出ると半島の反対側、川尻に向かう。
川尻漁港で食事。さっき食べたような気がすると思ったけど、用意されてるので食べる。
食事はカレー。ただ具はなかったので、(僕は)感謝だけど、みんないいの?
半島から出て海岸べりにある立石観音像まで下るとあとは千畳敷まで、上りいっちょくせーん。
いや、一直線じゃない。一旦上って、ほーらあの辺って見せたあと、どーんと下って再度上らせると言う底意地の悪さ。
向津具半島よりムカつく。
勤勉なかたつむりさんのように上る。
登頂完了。時刻は13時をおしらせします。
下る。一気にどーんと400m。
少し前を走る人、後ろを走る人とのチキンレース。
この勝負、負けられない!
...負けました。下りきる前に少し上るんですもの。
腿パツパツで膝ガクガクです。
ただ敗者もまだ走り続けなくてはなりません。
残すは、ほんのあと110km。
次の正明交差点から湯本温泉までの往復は、まさに距離合わせのためのコース。
前々回まであった鯨墓と言うコースが使えなくなったので、新設されたところ。
幹線道路の右と左の横断歩道を行って来いで9km。
これは辛い。町中の単調な景色。エイド代わりに頼りの自販機も右側はほとんど置いてないし。
次のエイドの仙崎に到着したのは18時を回る頃。ここから一旦青海島まで渡って、スタンプしたら帰って来る。
そろそろ暗くなる時の準備。ヘッドライト装填。昨日点かなかったのは、電池ケースの蓋が少しずれていたみたい。
確認はすでにしているけど、もう一度点滅を確認。
OK。GO!
帰ってきました。時刻は20時。
あ、青海島では食事としてカレーが振舞わましたが体が受け付けませんでした。
仙崎再スタート。
さーて困った。
実はここから先、道がよくわからない上に辺りは真っ暗。
頼りは、曲がる場所には書いてあると言う路面の白線と手持ちの地図。
もちろんiPhoneも持ってるのだけど、それでもよくわからない。
トボトボと歩く。次の宗頭文化センタってのが一応の仮眠所ではあるのだけど、このままいくと到着は何時になることか。
仙崎で教えてもらっていた道と言うか海岸を「えーこんなとこ通るのかよ」と思いながら歩く。
と、そこに軽快な足音。
振り返るとレースの参加者の方。くっついて行っていいですか?
快諾してもらったので、一緒に走る。
なんでそんなに軽快なの?と思うくらいのペースで走られてるのだけど、置いてかれると怖いので一生懸命ついていく。
止まったのは、赤信号が何回かと僕が転んだ一回のみ。えーまた転びましたよ。暗闇の、縁石に足引っ掛けられて。
幸いここはそんなにひどいこけ方じゃなかったので、すぐ立ち直りました。
走りながら話す。
「宗頭から玉江までも心配なんですよねー」
この区間はいくつかの暗闇の峠越えで、幽霊目撃譚が後を絶たない場所。
「いーですよ。じゃ仮眠とって24時前に一緒に出ましょう」
わーい。ラッキー。
22時にはセンターへ到着、用意された食事には手をつけず、そのまま仮眠所へ。
23時半には目を覚まし、用意を済ます。
ごそごそと起き出したお兄さん。
ちょっとトイレへと言い残し、しばらく戻ってこない。
戻ってきた。顔色が悪い(気がする)。
「すいません。気分が悪いです。リタイアしようと思います」
え”ーとは、思ったけど、声には出せず
「大丈夫ですか?休んで気分が良くなったら復帰してください」と声をかけて
一人外へ。
3km先の峠入り口までは辿いたが、そこから足がすくむ。
グズグズしてたら経験豊富そうな叔父様が追いつき、声をかけてくれる。
「どーぞついてきてください。私も最初はコバンザメでしたよ。ハッハー」
ありがたく後をついていく。
鎖峠を越えて三見駅から玉江へ。
噂に違わず怖いところ、と言うか通路という感じが全くしない。
ここは次回でも一人じゃ嫌だな、と思う。
玉江到着。4時過ぎ。
ここから先は去年経験のある場所。
おじ様に感謝の言葉と、次のエイドからは一人で行きたい旨を告げる。
次のエイドは虎ケ埼。去年肉抜きのカレーをお願いした場所。
今年はあまり苦労をかけないよう、「ご飯にかけるのはスープだけで」とお願いする。
いや、具の分別がない方が楽かなと思って。
完食。そして叔父様とお別れ。6時半。スタート。
結構いい具合に走れる。
時間帯は当日開催の萩往還CコースやDコースの開催と重なり、向こうからやってくる人たちとすれ違う。
すれ違うたびにねぎらいの言葉をくれるのが嬉しい。
萩往還道突入。
見覚えのある道。
一升谷。お茶の振る舞い。
あとはゴールまでまっすぐ。
と思ったら好事魔多し。重大な勘違いだった。
肉刺が潰れた。
ハイドレ(背中にしょってる水筒ね)が空になった。
そして、道がわからなくなる。
往還道から一旦車道に出て再び往還道に戻るまでの15km。
都合の悪いことに、周りにランナーらしき人が誰もいない。
もはや、すでに間違って距離を走ってしまったか。
疑心暗鬼にかられる。
観光の方が通る。
聞く。
「あのー、山口はどちらでしょうか?」
「?」
(あ、走ってるのは全部山口県内だ)
「あのー、瑠璃光寺は?」
「それなら、この先をずーっと下っていけばいいですよ」
「え、でも次の往還道戻るまでは上りじゃなかったでしたっけ」
「大丈夫。下ってから上ります」
そうだっけな。
あ、ランナーすれ違った。
お礼を言って走る。
下って上って上って。萩往還道に復帰。あとは7kmの下り。
うち、往還道内で4km。石畳というか瓦礫を敷き詰めた道。
足の裏が痛くて、石の上に置けない。
カニさん歩きで、坂を下る。
チョキチョキチョキ(^^;
往還道終了。
去年は全力走したゴールまでのロード3km。
走れない。
ぼちぼちと歩いて進む。
残り2km。
後ろからパタパタと軽快な足音。
振り向くと上品そうな奥様。
ニコッとされて
「あとたった2kmよ。最後は軽快に走りなさい(^^)」
君はフジちゃんか?
それでも走る。
この先を曲がればゴール。
迎えてくれる友達がいる。
感謝。
ゴール。