野辺山ウルトラマラソン。スタートは朝の5時。
気温は6度。もっと低いんじゃないかと思わせる冷たい空気が、ランナーの肌を刺す。
垣間見える八ヶ岳連峰の頂はまだ雪を抱いている。
レース開始後は気温が上がり、暑くなるのはわかっているのでスタート時の服装に悩む。
ぼくは基本的にレースを走るときは、何も持ちたくないし、何も考えたくないので、暑くなることを
想定した格好で並ぶ。寒いよー(^^;
スターターは安藤美姫。なんで?
DJが聞いている。
DJ「野辺山ウルトラマラソンとはどういう御縁で?」
一緒にスタートを待っていた友達が先に答える。
友達「きっと、この辺でスケートのトレーニングをしたことがあるから」
その通りだった。
レーススタート。
野辺山のコースは上りが始まる5km過ぎから25kmくらいは山の中の林道を走る。トレイルランじゃないっつーの。
前の人の後をなぞるように、石のないところや動かなさそうなところを走る。
それでも何度か足を取られる。
下りが始まった20kmあたりで、後ろからきたお兄さんに声をかけられる。
お兄さん「富士五湖出たッすか。あれきつかったすよねー」
ぼくは、前回のウルトラーレースのTシャツを着て走ることにしている。
ぼく「まーね(^^)」
お兄さん「ここめっちゃ楽しいですよねー」
ぼくの心の声「変態め(^^;」
お兄さん「じゃ、先行きます。お互いがんばりましょー」
あくまでさわやかなお兄さんであった。
林道を下り続ける。
怖がりのぼくはこんなとこを下るのは本当に苦手だ。それでも一生懸命下り続ける。
23kmあたり、動く石を踏んで足をとられ、身体が前に投げ出される。膝から落ちるとエライことになると思ったので、
なんとか右手をはずませ、受け身を取るようにするが、うまくいかない。ついた手は手首をひねり、その後ずっと痛かった。
結局膝もついたので、すりきず。パンツの膝あたりも破れてる。詳しく見ると嫌になるので、見ないがパンツがへばりつく程度には
血が流れていた。
とりあえず、うずくまる。
通りすがる人が、みんな声をかけていく「大丈夫ですかー」みんなやさしい(^^)
ただ、みんな走っているので、近づいてくるときに「だいじ…」が聞こえ、通り過ぎた後に「ょうぶですかー」と聞こえる。
「大丈夫でーす」と背中に向けて答えるも、3分ほどうずくまる。
ま、じっとしてるわけにもいかないのでスタート。走ってみるとなんとか走れそう。ネタが出来たと笑うことにする。
坂が終わった後は、またしばらくはおとなしめの上り下り。
で、メインイベント。65km付近からほぼ80kmまでに標高で500mを超える高さを上る。馬越峠。
登山か?突っ込みたくなる。
一生懸命上る坂。
72kmまでが、第一楽章。ここで終わるコースの人は、ゴールの温泉で打ち上げが出来る。
こえてから標識。
「ここから馬越峠」
え、いままでのは何だったの?
標識からは、とんでもない急こう配。歩かない、という誓いはすぐにやぶった。ただ、歩くとぼくのスピードは
極端にのろい。あんまり抜かれるのも悔しいので、歩くの2/3、走るの1/3にして誠意を見せる。
だらだらと上る。
やがて80km。正確には79km過ぎのエイドで上りは終了。
「これで上りは終わりですよね。」エイドの叔母様に聞く。
叔母様「ここはね。」
ぼく「え?どういうこと。」
叔母様「坂下ったら、最後の10kmはまた上りよ。あそこもきついって言うわよ」
高低表ではわかりづらいが、坂を下りきったら多少の上りが有る。
ぼくはただの脅しだと思った。
ら、間違いだった。
坂を下る。80kmから90kmにかけて延々と下る。足の痛いのは置いておく。
ここで走らなきゃ、いつ終われるかわかんない。
90kmに到達。80km以降ずっと5分台を保てていたので、気分は余裕のよっちゃん。
で、なだらかな坂を上る。
最初は走って登っていたのが、坂が少しだけ勾配を上げたところで足が止まる。
下り坂で着地筋のダメージのせいか。こんな道どうして歩かなきゃなんないって坂が上れない。
だらだらと歩く。
ラスト4km。ゴールの放送が聞こえるあたり。やっと足が動き出す。
現金な足。何より早く終わりたい。
走る。3km、2km、1km。そしてゴール。
完走後、サービスの牛乳をもらう。
叔父さんがねぎらいの言葉。
叔父さん「お疲れ様、今の感想は?」
ぼく「辛い」笑いながらこたえる。
叔父さん「いい笑顔してるよ、きっと来年もやるね」
そうかもしれない。
記録:11:42:50