赤間関街道中道筋マラニック

平成元年に始まった萩往還は平成と共に終りをつげ、令和元年の今年第一回赤間関街道中道筋マラニック。
瀬戸内海側の下関市長府をスタートして日本海側萩市で折り返し長府に戻るコース。
総距離140km,制限時間は28時間。少し甘めに思えるこの設定は、コースの一部が山中を通るトレイルでありさらに往路はその区間を超えるのが夜間となるため。
理解はしていたつもりだったが、その認識すら甘かったと気がついたのは後のこと。
この時点でぼくは、往路は山道が始まるまでの30kmで4時間、残り40kmを8時間の計12時間で大丈夫と余裕ぶっこいてた。
スタート当日11時からの説明会を聞いても、一緒に走るNancy共々そう考えていた。
午後2時半スタート。出だしは快調。舗装路の起伏を越えている間は思いは変わらない。
実際最初の30kmは4時間をかけずに終わる。怪しくなってきたのは、最初のトレイルあたりから。道が予想以上に荒れている。
そしてコースがわかりづらい。
これは危険。この時点で自分達のMAPと首っぴきで進むのは諦め、確信を持って進んでるように見える前のパーティーに遅れないようについていく。
コースについては一応自分たちでもかなり確認してきたつもりだったが夜を迎えてあたりが暗闇を増すとまるで自信が持てない。
次のエイドでこのパーティーにご挨拶。女性1人男性3人の組み合わせ。快く「じゃあ一緒に行きましょう」と言ってもらえる。
あとで聞いたところ女性が地元の方で何回か試走を行い、残り3名はそれぞれ別の県外から来て説明会会場で知り合い、即席パーテイーになったとのこと。
走っている姿から見ると、先を走る順を逐次ローテーションしながら、女性が少し迷うと誰かがアドバイスし支える姿は歴戦のツワモノ。
個々人のスキルはかなり高そうなことを伺わせる。ただ彼らのスタイルがロードはしっかりがっつり走るけれど、トレイル区間はゆっくりそしてエイドでの休憩はたっぷり
という形なのでNancyとぼくもなんとかついていくことができる。

ロードでは「えっそこで曲がるの」なんてことも多々あって予習の未熟さを痛感されられたが、前を行く背中の緑のライトの安心感と彼らと一緒に走ることができる自分の強運さ加減に幸せを感じながら走る。
トレイルでは、前を行く人が一々声を出して後続に警戒してくれる。
「浮き石あります」の警告には石に乗り上げて足をひねり、「溝あります」の警告にはハマり、「筍あります」の警告には蹴り上げてつまずいて、「路肩ガケです」の警告にはガケから落ちてみたりはしなかったけど、自分の下手さ加減を噛み締めながら進む。
怖いほど順調にパーティーは進むが、折り返し地点到達は午前3時過ぎ。スタート地点とゴール地点の違いから前半は70kmを超える78kmでその分後半が短いということにはなるが、ここまでにかかった時間は14時間近く。
今までのペースかなり頑張ったのにこれか、と思って少し打ちひしがれる。帰りを走りきる自信が全く湧いてこない。加えて寒さ。息を吐くと氷のように白くなるくらいの寒さがやる気を奪っていく。
この地点で少し暖かいお弁当も振る舞われるが食も進まない。30分をしばらく過ぎたあたりでパーティーのみんながそろそろ行くよと声をかけていく。うずくまって動く気配のないぼくを見てNancyが断り先に行ってくれるよう話しているのが聞こえる。そのまま1時間近く固まってる。リタイアしようかって言ってくれるのを期待しながら。
Nancyが声をかけてくる。「そろそろ行こっか」
心が決まる。このレースに誘ったのはぼく。ぼくからリタイアを言い出す権利はない。なら、最後まで足掻く。
再スタートは4時50分。ガタガタ震えながら走り出すもやがて体が温まる。合わせて辺りがうっすらと明るさを取り戻す。
復路の道、身体が覚えている。ほぼ迷うことなく道を進むことができる(まぁ1箇所間違えてとこもあったけどさ)
往路で苦しんだトレイル、上りも下りも恐々歩いてた。復路は違う。朝の日差しの中、上りはしっかりとした足取りで早足で、そして下りは走る。羽が生えたように。🎵残酷な天使のテーゼ。
ガンガン行く。午前10時過ぎ、パーティーの4人に追いつき再開を笑い合う。そこからは前後してそれぞれのペースで進む。
エイドで知った情報。残すは6時間で30km。嘘だ。30kmは信じない。行けるとこはグイグイ行く。
10分の小睡眠休憩2回(もちろんエイドは別)とっただけで行け行け行け行け。誰が嘘ついてるかわかんない。後悔したくなきゃ騙されないようにしなくっちゃ。
ようやく落ち着いたのは、午後3時。コースの脇で応援してくれてた婆ちゃんが「あと6km」って言ってくれた時点でした。
最後も走ったよ。早く帰りたいから。そして最後は満ち足りた気分で、ゴール。

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